上富田町 地域

上富田町に木質バイオマス発電所 6月運用開始 山間地域の活性化と持続化に貢献

 森林に放置されてきた未利用材や間伐材などを活用して発電する「木質バイオマス発電所」が、上富田町生馬に建設。6月運用開始に向けて準備が進められている。

 木質バイオマス発電所は、森林未利用材などを燃焼させて発電する仕組みで、化石燃料を使用しないため二酸化炭素の排出を削減できるクリーエネルギーとして、太陽光や風力などの発電法と並び、近年実用化が進んでいる。

木質バイオマス発電の仕組み


 この発電所は、西牟婁森林組合田辺木材共販所に隣接し、同所の敷地の一部を未利用原木の貯木場として活用。また森林に放置されてきた木材や、製材としては使えない部分を適正な価格で買い取ることで、林業の活性化とともに新たな事業、雇用の創出にも繋がる。
 最大6800㌔㍗の発電能力を持ち、1万3000~1万4000世帯の電力を賄うことができる。総事業費は45億円。年間約8万㌧の木材を使用するため、西牟婁森林組合をはじめとする県内森林組合のほかにも県内の企業などから木材を仕入れるという。

西牟婁森林組合田辺木材共販所に隣接


 発電所の建設を計画したのは、東京都港区に本社を置くグリーン・サーマル㈱。バイオマス発電所の開発・運営を手がける会社で、2012年に福島県会津若松市で固定価格買取制度にもとづく日本初となるバイオマス発電所の営業運転を開始。以後、全国でバイオマス発電所の開発や運営を手がけ、今回の上富田町で8件目。DSグリーン発電和歌山合同会社を設立し、発電事業を行っていく。
 森林資源が豊富な和歌山県内でのバイオマス発電所の建設を目指してきた同社は、開発に必要な土地と水の確保、そして関西電力㈱が所有する特別高圧線という送電線の空き容量が十分であることなどの条件を満たしていた同所への建設を決めた。2018年6月から土地の造成工事を開始。発電所もほぼ完成し、2月からは発電所の試運転や、主に地元から雇用した10人の運転員の研修などを行っていくという。


 発電した電気は関西電力の送電線を通じ売電するが、大きな発電量を安定供給できるため、各地方にバイオマス発電所があればクリーンエネルギーでの「電力の地産地消」が実現できる可能性もあり、森林問題の解決や雇用の創出にも繋がることから、山間都市の新しい産業になるとして、同社では今後も全国への拡大を目指していくという。
 同所の建設を進めてきた開発部の下野文治郎部長は「弊社では福島県の初号機から積み重ねてきたバイオマス発電所開発・運営のノウハウがあり、それを各地域にフィットさせていけば、全国の山間地域に共通する問題の解決になり、既存の電力に頼らない地域ごとの電力の地産地消も夢ではありません。クリーンエネルギーであり、太陽光や風力よりも安定供給できるバイオマス発電の魅力を地域の皆様に知っていただきたい」と話している。
 膨大な森林資源を持つ和歌山で、上富田町から始まる大規模なバイオマス発電所の運用。持続可能な地域社会の軸となる産業に成長できるか、グリーン・サーマルと林業関係者の取り組みに注目したい。同社のホームページはhttp://www.gthermal.co.jp/

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