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新しい時代の広域観光で地域の魅力を発信 高野山麓ツーリズムビューロー

 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の中核・高野山。聖地の玄関口として古くから大きな影響を受けながら生活をともにし、独自の歴史文化を築いてきた橋本市周辺の山麓地域では、どのような観光業が営まれているのか。2017年秋に設立された「高野山麓ツーリズムビューロー」を訪ねた。

 高野山麓ツーリズムビューローは橋本市を拠点に、かつらぎ町、九度山町、高野町、紀美野町、田辺市龍神村、奈良県五條市をエリアとする広域観光の旅行代理店事業者。観光業界をはじめ、商工会や農協、大学や宗教などジャンルの垣根を超えた地域のリーダーが結集して広域観光の振興を目指し設立された。

 この地域は真言宗の聖地であるとともに、世界遺産の中核地で世界的な観光地でもある高野山の麓にあり、古くから密接なつながりを持ちながら独自の歴史文化を築いてきた。しかし近年は、関西圏のベッドタウンとして企業誘致に傾倒してきたというが、橋本市が観光振興を提唱したことを機に、他にはない地域資源を有することで共通している周辺地域をマーケットエリアとした広域観光事業体の設立への動きが加速していった。

 業務内容は主に、各地域の魅力を発信するプロモーション事業と、観光資源を生かした旅行ツアーの企画・販売。これまでに田辺市龍神村で「季楽里龍神」に宿泊し、とうふ作りやしいたけの収穫体験などを行うツアーや、日本最大級の天文台として知られる「みさと天文台」でミニ望遠鏡づくりや流星群観賞をし、古民家レストランでのランチや美里温泉「かじか荘」に宿泊し、栗拾いや山菜摘み体験など、地域独自の生活や歴史文化を観光資源として組み合わせた「着地型観光」のツアーを次々に打ち出してきた。

 理事長の堀切久壽さん(57)は紀陽銀行の出身で、県内各地で観光経済の振興をサポートする仕事に携わってきた。橋本支店時代に葬儀に出席すると、僧侶のほぼすべてが高野山真言宗の寺院から来ていたことに、高野山との密接なつながりを感じたという。

 「橋本市周辺は、高野山とともに歩んできた地域。高野山を訪れる観光客の多くは橋本駅を経由します。高野山には宗教寺院がありますが、麓の町には高野山とともに育まれてきた独自の文化や生活があります。この貴重な観光資源を掘り起こし、高野山を訪れる観光客はもちろん、関西圏の皆さんに、まだ知られていない魅力を伝えていくことが私たちの役割」という。

 これまで大手旅行代理店などが手をつけてこなかった観光資源を、ツアーとして成功させるためにはさまざまな課題がある。第一に、収益性に乏しいということが挙げられる。個人レベルでの事業者とタイアップしていき、それらをとりまとめ収益を確保していく作業が求められる。

 また、従来の観光バスでの移動はコストが高く、専用の駐車スペースがある場所に行き先が限定される。そこで今後、橋本駅などで電動アシスト機能付きのマウンテンバイクをレンタルできるようにする構想もあるといい、勾配の急な市街地や高野山方面へのサイクリングを楽しめるようになる。

 これらの情報を統合的に配信する手段として、独自のホームページ開設やSNSの活用も行っていく。「これまで注目されなかった普通の生活や文化が、これからは貴重な観光資源になり得ます。集客には価格を抑えることが求められてきましたが、今までなかったもの、良いものを提供できればお客様の満足が得られるという実感もあります。価格よりも中身! まだ知られていない地域の魅力を掘り起こし、それらを求める潜在機なニーズに届けていくことが、我々に求められているものであり、新しい時代の地域振興につながっていくと信じています」。

 彼らの取り組みは、橋本市周辺と同じく和歌山にはまだまだ知られていない魅力がたくさんあることを教えてくれる。小規模な活動を続ける事業にもスポットを当ててくれる彼らの存在は、地域にとって心強いものに違いない。

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