和歌山市

電力の地産地消へ!「県内唯一の電力会社」和歌山電力㈱の挑戦

 2016年4月の電力自由化により、家庭や会社などで使う電気を自由に選べるように。現在では全国で100社以上の電力会社があるといわれ、料金の安さや地域、生活環境に合わせたさまざまなメリットやサービスを生み出す激しい競争が繰り広げられているが、「県内唯一の電力会社」として設立された和歌山電力㈱の取り組みを取材した。

 和歌山電力㈱は、県内に本社を持つ唯一の電力会社として、電力自由化に先んじた2015年1月に和歌山市で設立。和歌山市を中心とした企業や自治体などへの電力供給実績を持ち、和歌山市役所本庁舎のみで年間約2000万円の電気料金を削減させるなど、「関西最安レベル」といわれる格安料金プランの実現により、県内全域に知名度と供給実績を広げつつある。

 格安料金を実現できる背景にはまず、自社で発電所を持たずに安価な電気を調達することが挙げられる。電気を他社から仕入れることは、発電所を持ち自社で生産するよりも高値での「仕入れ」になるが、発電所を維持する膨大なコストを削減できるため、価格を抑えることができる。

 また、地元資本企業の強みを生かし、県内の各自治体や企業・団体・金融機関らへ電力を供給するだけでなく、県内各地に支社・支店を持つ企業などに代理店提携をすることで、営業コストを大幅に削減できているという。

 同社をはじめとした「新電力」への移行は、県内では約10~15%程度、関西での同約20%と比べ低いと同社では分析。特に紀中、紀南地域では知名度、実績ともに遅れをとっており、同地域への浸透が今後の課題だという。

 県内で発生する電気料金は年間数100億円にのぼるといわれ、そのほとんどが県外に流出しているのが現状。「電気を弊社に切り替えることで、支払われた電気料金が県内で循環することになります」といい、同社では利益の一部を県内の自治体や学校などに寄付するなど、利益を地域活動に還元する取り組みも行っている。

 また現在は低価格での供給を実現するために、電気の調達は主に県外から行っているが、「電力の地産地消」を目標に掲げ、県内からの調達率を上げていき、将来的には県内で生産された電気を県内で消費する仕組みを構築とていきたいとしている。

 設立から4年。未知の分野を開拓し、年商10億円に達しようとしている同社を率いるのは、山口高史さん(35)。和歌山市で生まれ育ち、京都大学薬学部卒業後に大阪市の経営コンサルティング会社・船井総合研究所で経営を学んだ後、父が理事長を務めるエフエム和歌山でマーケティングを担当。新電力に関する動向を伺っていたところ、県内では新規参入の動きがなかったこともあり、電力会社設立を決めた。

 「電力自由化から3年が経とうとしていますが、和歌山ではまだまだ認知度が低いと感じています。まずは電気を自由に選べること、個人の家庭や企業など、状況に応じたプランを選べることを周知し、そのうえで電気を県内で循環させる『電力の地産地消』に関心を持っていただけるように、さまざまな方法でアプローチしていきたい」と展望している。

 電力自由化後に「電気料金が安くなる」などと勧誘し、実際には逆に高くなることもある詐欺が横行していることもあり、地域に密着した信頼の置ける企業や団体に営業活動を任せ、丁寧な説明を心がけているという。

 また、電力会社を変更しても送配電を行う会社はこれまでと変わらないため「初期工事の必要があるのでは」や「停電や電気品質が心配」、「仕入れができずに電気が安定供給されないのでは」、「会社が倒産したりした場合に電気が届かなくなるのでは」などといった心配はすべて不要で、安心して新電力への変更を検討してほしいと呼びかけている。

 問い合わせはしかく☎073・488・1375。ホームページはhttps://w-epco.co.jp/

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