太地町

「学んでふれ合える」くじらの博物館 くじらの町・太地町

 2019年7月1日、31年ぶりに日本で商業捕鯨が再開。古式捕鯨発祥の地として400年の歴史を誇る太地町では現在、一部の小型鯨類の漁を操業するにとどまっているというが、捕鯨とともに歩んできた同町は今も「くじらの町」として知られている。なかでも捕鯨の歴史をはじめ、世界でも珍しいイルカやクジラとのふれ合いやアクティビティーが楽しめる、町の中核施設・くじらの博物館を改めて紹介する。

 本館1階大ホールには太地の伝統的な捕鯨方法「古式捕鯨」を再現したジオラマや、吹き抜け部分にはセミクジラやシャチなどの実物全身骨格標本を吊り下げ展示。2階は「生物学的にみたクジラ」。世界の海に80種類以上いるといわれるが、多くの謎に包まれているクジラの骨格標本や液浸標本などを展示している。3階は「人とクジラとの関わり」。捕鯨を糧に生きてきた太地町の人とクジラの関係の歴史資料を展示している。


 イルカショープールでは、カマイルカ、スジイルカなどのスピーディーなイルカショーを毎日9時30分、11時15分、13時15分、15時15分から見られる。
 ショーの後は、気軽に参加できるイルカにタッチ(1人300円)や、トレーナーと同じようにショーのステージに立ち実際にサインを出すことができるイルカのトレーナー体験(1人1000円・要予約)も。また「世界で最も大きい動物」として知られるシロナガスクジラの強化プラスチック製の原寸大全身骨格標本も見られる。
 クジラショーエリアは自然の入江を仕切って作られた自然プールで、世界でも珍しいゴンドウクジラだけのショーのほか、コビレゴンドウ、オキゴンドウ、ハナゴンドウなども見られる。毎日10時15分、12時15分、14時15分、16時から無料で開催。また、クジラへの餌あげ体験やくじらと寄り添えるカヤックアドベンチャー、ゴンドウクジラと水の中でふれ合える「ふれあいスイム」なども楽しめる。


 巨大な楕円形の大水槽がシンボルの海洋水族館「マリナリュウム」では、日本で唯一飼育されているスジイルカや、アルビノのバンドウイルカのほか、熊野灘に生息する魚類や甲殻類を約60種500点展示している。
 開館時間は8時30分から17時で年中無休。ショーやイベントは天候や動物の体調などにより中止・変更になる場合あり。入場料は大人1500円、小中学生800円、幼児無料(団体は無料)。70歳以上、団体割引あり。年間の入場料が大幅に割引され、入会特典もある「くじら友の会」もある。問い合わせは☎0735・59・2400。ホームページは http://kujirakan.jp/

捕鯨の歴史と現状 まとめ

 古式捕鯨発祥の地・太地町の捕鯨の歴史は約400年。昭和初期から日本で捕鯨が盛んになると、当時、牛肉や豚肉よりも安く手に入った鯨の肉は、学校給食に出るほど人気の食材でもあったが、1951年に日本が国際捕鯨委員会(IWC)に加盟すると、欧米諸国などから反捕鯨の風が強まり、1988年には大型の鯨を捕る商業捕鯨は中止になった。
 その後も日本は商業捕鯨の再開を訴え続けてきたが叶わず、鯨の数が一定数回復したとして2018年12月、国際捕鯨取締条約、IWCからの脱退を表明。31年ぶりに商業捕鯨の再開を決めた。
 現在の太地町では、コビレゴンドウやハナゴンドウなどの群れを約10隻の船団で湾内に追い込み捕獲する「追い込み漁業」と、バンドウイルカやハナゴンドウなどを手投げのモリで突きとり捕獲する「突きん棒漁業」を実施。いずれも小型鯨類が対象だ。大型鯨類の商業捕鯨は、ミンククジラやニタリクジラ、イワシクジラなどを沖合海域で捕獲する母船式捕鯨業が山口県下関市を本拠地として、ミンククジラなどを小型捕鯨船で捕獲する沿岸捕鯨業が北海道釧路市などでそれぞれ行われているが、太地町では現在はいずれも行われていない。

この記事へのコメントはありません。

Translate