次世代の乗り物として全国・海外からも注目を集めるEV(電動輸送機器)バイク「glafitバイクGFR-01」を製造販売する和歌山市のglafit㈱を率いている。インターネットを通じて資金調達を行うクラウドファンディングで、約1億3000万円を集めたことや「トヨタやホンダを超える乗り物メーカーになる」という目標を発言するなど、突き抜けた言動で和歌山から全国へ話題と期待感を発信している注目の経営者に迫った。
glafitが手掛ける電動バイクは、自転車のような外観でペダル走行ができるほか、モーターの力でバイクのように自動走行ができ、それらを組み合わせたハイブリッド走行もできる。バイクより軽量で折りたたんで持ち運んだり、狭い場所に収納したり車に積み込んだりできる省スペース利用できることが最大の特徴。その手軽さと新感覚の乗り心地、さらにEVを利用した一般向けの乗り物をいち早く開発・市販化したとして広く注目を集めている。
「glafitバイクGFR-01」は「日経優秀製品・サービス賞最優秀賞 日経MJ賞」や「グッドデザイン賞2018」などを授賞。またヤマハ発動機やパナソニックなどの世界企業と業務提携を行うなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進しているが、最も話題を集めたのは、開発段階で活用したクラウドファンディングで2017年当時の日本最高記録となる約1億3000万円もの資金を調達したことだろう。
クラウドファンディングでの成功について鳴海さんは、特に特別なことはしていないと言うが「目標金額が1億円だったことや、和歌山の無名の会社だったことなどもあり、運営会社は当初は難色を示しましたが、開始する時に東京で記者会見を行いました。何のコネもお膳立てもありませんでしたが、当時はなかったEVを使った一般向けの乗り物という目新しさなど商品の魅力が広まり、さまざまなメディアに取り上げていただくことができました」。話題とともに資金が集まっていくにつれ「和歌山の会社が」というのが逆に全国メディアや東京での活動で注目を集めることに一役買ったと笑う。
現在では東京に営業所を持ち、主に広報やマーケティングを行い、中国に製造や貿易を行う子会社を持ち、自身も経営の成功事例を話す講演などで全国を飛び回る日々を過ごすが、あくまでも拠点は和歌山に置き、和歌山から全国・世界を視野に2020年、年明けすぐに「メイドイン和歌山」次世代モデルの新商品発表を行い、その後も立て続けに新商品を発表していくという。そしてその先には「トヨタやホンダを超える次世代の乗り物メーカーになる」という「100年企業」への壮大なビジョンを描いている。
「和歌山から全国・世界へ」というビジョンを持ち突き進む鳴海さんの経営の原点は高校1年生、15歳のころに遡る。お金を稼ぎたかったがアルバイトを禁止されていたことから、アパレル品の販売を行う事業を開始。18歳でオリジナルPCの受注組立販売、19歳で中古車や関連パーツなどのネット販売など次々と事業を行い、22歳で中古車販売業として起業。その後は中古車の輸出とともにカー用品の製造も手掛け、中国への進出を果たす。
なかでも「人生の転機となった出来事」と振り返るのが、㈱フォーバル代表取締役会長で、伝説的な経営者として知られる大久保秀夫氏との出会いだという。情報通信業界で数々の功績を残し、現在では「大久保秀夫塾」という経営塾を運営する同氏と出会い、その一番弟子として経営のノウハウを叩き込まれた3年間を自身のビジネスに生かし、遥か遠くに霞んでいた「乗り物メーカーになりたい」という目標を明確なビジョンへと変え、100年先を見据える経営理念を掲げる大きな原動力となった。
今では東京をはじめ、全国・世界を飛び回り、和歌山に滞在するのは月の3分の1にも満たないといい、周囲の多くの人から「和歌山を出たほうがいい」と言われるというが「和歌山から世界へ」という信念に変わりはない。2015年には電力自由化に先んじて電力会社・和歌山電力㈱を友人と設立。取締役として和歌山に密着したサービスの提供に貢献している。
「私が和歌山の人間で、和歌山で事業をしていることで、ビジネスを中心に関わる方が和歌山に関心を持っていただき、また和歌山を訪れてくれる方も多くなってきました」。圧倒的なパワーで突き進む鳴海さんが和歌山を拠点に事業を続けることで、新たに和歌山を知り、訪ねる人が今後も増えていくだろう。